■刈部商店
川口市中青木1-11-23
2000年頃・閉店


営業していたころの刈部の様子

 最後まで粘って営業していたラスト・オブ・ぼったら屋。

 経営者は刈部うめ(営業許可書にそうある)。地元では実力ナンパー1として昔からその牙城は揺るぎなかった。

 刈部に通えるようになったのは中学も後半からで、このころになると容量を掴み、時間帯をずらすなどして、うまいぼったらにありついていた。現在に至るもそれは変わらない。
 ここでは好き嫌いの多い子どものために内容物一覧があり、注文の際「おぱちやん、べニショウ(紅生姜)ぬきね」と元気に頼む。
 しかしこのシステムには知られざるもう一つの理由がある。常連しか知らない、カレー粉である。勿論メニユーにはない。
 カレー粉は十円で入れてもらえるのだが、通は「揚げ玉抜かしてカレー粉」と頼む。

 こちらは兎に角ヤンキーの方々が多く、入りづらい(80年代真っただ中であるから、想像できるだろう)。今ではそうでもないが、そのOB、現代的なヤンキーみたいな中学生ならいくらでもいる。
 なにせ、ヤンキーの総会場所になっていたほどだ。しかしおぱちやんはこういう「みんなほんとはいい子たちなんだよ」。

 店の脇が奥の長屋へと続く通路になっているのだが、その通路側に小さく、一級建築士の事務所の看板が括り付けてある。おばちやんとの雑談によると、息子の事務所らしい。
 以前に息子の嫁と仲が悪いと言っていたが、嫁さんの気持ちは分かる。夫がせっかく建築事務所を聞いたのに、道路側では姑が怪しげなぼったらやを営業し、連日その前はヤンキーの群れ。ばあさんとっととポックリいってくれってなものだろう。

 しかしそうはいかない。おばちやんは私が小学生の時に目撃してから、その容姿が全くかわらないのだ。
 それは「サザエさん」の秘薬、年をとらない薬でも服用しているのではという疑いすら持てるほどだ。この先もきっとそうだろう、きっと。